FPの手法で将来の収支を比較シミュレーション
前回の記事では女性が出産を機に働き方を選択した場合についてその後の労働収入の比較を書かせていただきましたが、今回はそこに支出も加えて比較してみましょう。
比較の前提条件をもう少し詳しく説明します。
- 夫32歳、妻30歳、間もなく第一子出産予定、3年後に第二子出産
という4人家族 - 夫年収 519万円(中規模製造業勤務)60~65歳 嘱託社員
- 妻年収 368万円(介護施設勤務)60歳~65歳 パート
- 生活費 月25万円(住居費、子供関連費除く)
- 2人の子供の教育プランは、どちらも幼稚園は私立、小中高校は公立、4年生大学で私立自宅または寮
- 住宅は取得済み ローン残債3000万円30年、返済月額96,500円
- 車は2台所有 普通車と軽自動車 10年毎買い替え
実際に相談に来られたお客様の数値をベースにアレンジしてみました。
このご家庭で、妻の働き方(収入)だけを代えてシミュレーションしてみます。
産休、育休後復職、ずっとフルタイム正社員で働いた場合

お金の計算、という観点では当たり前ですが最も安定的に推移しています。
出産後の育休期間や子供が大学通学中は苦戦する可能性がありますが、ほとんどの期間で収入(青い折れ線グラフ)が支出(色がついた棒グラフの合計)を上回っています。

貯蓄予想額を見ても、安定的です。
しかし、子供を育てながら夫婦ともフルタイムで働く場合は時間に余裕が無いことから外食費などが膨らんでいったり、ストレス等からレジャー費、自分にご褒美支出などが増えていく傾向もあり注意は必要です。
ゆとりを持った生き方に幸福感を覚える人にとってフルタイムという選択が適しているかは分かりませんし、家族全員にとっても正しい選択であるかはそれぞれご家庭の考え方によるでしょう。
子供が小さいうちは周囲の援助などが整うかどうかといった課題もあり、誰でもが選べるとは限らないと思われます。
出産後退職、以降はパートで働いた場合

では、思い切って退職し、以降はいわゆる扶養の範囲の働き方(年収96万円、月8万円)を選ぶとどうなるでしょう?
このご家庭の場合は住宅を取得済みで住宅ローンは固定的な支出になりますので家計が苦しくなっても調整できる部分が限定的です。
何とか赤字にはならないものの、貯蓄に回す余力が少なく、車の買い替えもローンでしのぐ、という家計状況になりそうです。

貯蓄予想の推移を見ても厳しい状況が予測されます。
とたんに借金生活、というわけではないので暮らしてはいけるのですが、子供が大学進学時からマイナスに転じてしまう可能性があります。
前提条件のご家族の計画から考え直す必要に迫られそうです。
週休3日正社員でキャリアを継続した場合

週休3日正社員で仕事を続ける、となるとどうでしょう?
想定する収入はフルタイムと比べ約7割ほどの年収276万円としてみました。
全体的に収支のバランスが取れている期間も長く、しっかりとした計画を立てて実行していけば貯蓄も増やせそうです。
週に1日ゆとりのある働き方であると考えると、親の介護などの外的トラブルなどがあっても急に退職、ということににはならないかもしれません。
リスク耐性も高くなり、実現性も高まるように感じられます。

貯蓄見込みも十分可能性がある内容です。
もちろん油断は禁物ですし、目指したい資産形成目標はご家庭ごとに違いますから「これだけあれば十分安心」と言い切ることはできませんが、現在の支出に近い暮らし方であれば老後生活も見込みが立つ水準です。
前向きな気持でお仕事できる量は個人個人やご家庭の事情によっても異なります。
家族や自分の負担を高めてフルタイムで無ければ成り立たない、と不安から頑張りすぎてしまうのではなく、ゆとりを持った働き方を選択した場合に何が手に入るのか、ファイナンシャルプランナーに相談してみてはいかがでしょうか。
シミュレーションは全て株式会社エフピー研究所「FP名人2016年版」にて分析
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