少子高齢化、人口の減少を迎える日本において、介護業界の人材不足は喫緊の課題です。社会福祉法人 和光会が経営する「介護老人福祉施設 なごみ」は、年間休日132日(週休2.6日)を数え、低い離職率と個性豊かなスタッフが活躍しています。同施設長である徳田義盛さんを訪ね、介護への思い、週休3日の可能性についてお伺いしました。

住宅もまばらになり、畑が広がり始めるのんびりとした風景の中に「介護老人福祉施設 なごみ」があります。ホールには7段のひな人形が飾られ、春の訪れを待ちわびています。ほかにも、年代物のオルガンやブラウン管テレビが置かれ、壁に付けられたアンティークの振り子時計が静かに時を刻んでいます。高齢者にとって懐かしい、なじみのある生活家具が、おだやかな空気感を生み出しています。

一般的な介護施設と比べると、うちは物が多いかもしれません。物が多いということは、入居者がつまずいて転んだり、ぶつかってケガをしたりするリスクがあるということです。でも、あえてそうするのは、介護の現場において環境作りはとても大切だと考えているからです」。館内を案内する徳田さんが説明してくれました。

2009年5月に事業をスタートした「なごみ」は、地域密着型介護老人福祉施設のほか、認知症対応型通所介護「デイサービスセンターなごみ」、居宅介護支援事業所「支援センターなごみ」を運営。2014年には、それまでの施設理念を全スタッフで見直し、新たに「あなたの声に耳を傾け あなたの夢を、笑顔あふれる暮らしを、実現します」を掲げました。
暮らしの延長にある介護施設
入居サービスにおいては、自宅に近い環境を作り、ひとり一人の生活リズムを大切にしたケアを行っています。入居者が過ごす空間の床材などは、住宅と同じ素材を使うことで優しい雰囲気を演出。さらにお風呂も住宅用を設置。介護用の場合、スタッフが回り込んで身体を洗えるよう湯船の三方にスペースをとって設置するのが一般的とのこと。

「普通の家にはそんなお風呂ないでしょ」笑う徳田さん。「スタッフからしたら手間で大変だけど、特別なお風呂は入居者に余計なストレスを与えてしまうから。効率というのはあくまでも施設からみた話であって、入居者本位で考えれば、このお風呂がいいんです」そう話す徳田さんの言葉からは、ここが介護のための特別な場所ではなく、暮らしの延長にある場所だということが分かります。
「なごみ」には決まったサービスメニューはなく、入居者の生活パートナーとしてサポートします。さらに、スタッフだけでなく、隣接するこども園の子どもたち、ボランティアスタッフ、夏祭りなどには地域のご近所さんや学生など、地域が1つになって介護サービスに関わっているのも特徴です。

▲ウッドデッキの向こうに隣接する「なごみこども園」