週休3日正社員という働き方が、女性にもたらす恩恵
※株式会社週休3日が2016年に取材させていただいた記事のご紹介です。
家庭と仕事とのバランスに関してさまざまな意見がある中、子育てをするために、週休3日正社員という働き方を選択していた看護師の菅谷さん。働く女性の視点で週休3日のメリット、デメリットについて話してもらいました。(現在は退職し、海外留学されています。)
INTERVIEW●菅谷美絵子さん / 看護師
92年東京医科歯科大学卒後、同大学附属病院に就職。その後透析クリニック、老人ホームでの勤務を経て、2016年よりニュージーランドへ親子留学中…。
現代女性は欲張りだと思います。子育てもしたいし仕事もしたい。全部がんばりたい。
Q. 週休3日を選んだきっかけを教えてください。
子育てに余力を残しておきたかったのが一番の理由です。以前は病院に勤めていて、さんざん働いて、家に帰ったら寝るだけの生活でした。肉体的にも精神的にもきつかったですね。子どもが生まれて、そんな働き方はもう自信がなくなって。
Q. どんな条件で仕事を探していたんですか?
老人ホームで看護師の仕事を探していました。病院と比べると、勤務時間の都合が良く、も業務内容的にも緊迫感が比較的少ないですから。復帰するならスロースタートがいいなと思っていたとき、週休3日正社員の募集を見つけ、話を聞きに行きました。
Q. 雇用条件や仕事の内容はどのようなものですか?
正確に言うと、月18日勤務。給与は正社員の5分の4。働く時間が5分の4なので、給与も5分の4という考えですね。雇用保険と健康保険、厚生年金があって、賞与は正社員の半分という内容でした。
主な仕事は入居者の健康管理です。具体的にはバイタルサインや薬の管理、医師との橋渡し、家族への相談や説明、外部の病院への付き添いなど。介護施設なのでメインは介護士さん。入居者さんの調子が悪くなったときのケアや、介護士さんが仕事をしやすいようにサポートする役割ですね。
Q. 実際に仕事を始めてどうでした?
老人ホームなので土日出勤もあるので、平日に1日ないし2日休みがあるのは大きいですね。子どもは保育園に預けています。自分の生活を大切にできる時間がぐっと増えるのがいいですね。主婦は雑務の塊なので、土日や子どもがいるとなかなかできないことが多いですし。あと、子どもが体調不良になったときでも、平日に休みがあると対応できるのが助かります。
Q. 子どもって急に熱を出したり、体調をくずしたりしますからね。
はい。土日休みだと病院も休みで対応しきれない。たった1日なんですけど、平日に休みがあることで病院に行ける。その自由さは魅力ですね。
Q. お子さんの反応はどうですか?
まだ小さくて分からないかもしれないけど、ママは仕事で疲れているのと言うより、笑っている方がいいですから。
平日の休みがあるだけで、気持ちに余裕が生まれますね。休みの日は子どもを早く迎えに行こうとか、ちょっと夕飯をごちそうにしようとか(笑)あと、休みの日もうれしいけれど、休みの前日もありがたいんです。明日休みじゃんて。夜更かしとかよくないけれど、明日も仕事だと言って早く寝かしつけるのではなく、子どもと遊ぼうかとなる。単純にそんな日が増えるのがうれしいですね。
Q. 5日間続けて働くのと、そこに1日休みが入る週休3日の働き方は違いますか。
現代女性は、欲張りだと思います(笑)子育てもしたいし、仕事もしたい。全部がんばりたい。でも今は、パートか正社員かという究極の選択になってしまう。正社員でがんばろうと思うと、本当に色々と犠牲を払う。給料もついてくるけれど、子どもが小さければ小さいほどケアが必要だし、そこの時間はとっておきたいですから。
実家の隣だったので恵まれた環境ではあったけれど、今のおじいちゃん、おばあちゃんは若いし、活動的。孫の世話ばかりじゃない(笑)サポートしてくれる人にとっても、週休3日はありがたいと思います。平日5日勤務は裏を返せば、子どもの世話をする人も連続勤務ということですから。いくら身内でも、週5日お迎えして、晩ご飯にお風呂というのは辛いですよね。
子どもがママ、ママって言ってくれる時期って今だけですよね。給与や忙しさなど、正社員とパートの間にあたる週休3日という働き方はとても魅力的です。
時短社員でなく、週休3日正社員という選択
Q. 休3日はいいことばかりみたいですが(笑)デメリットはありますか?
稼ぎたい人には物足りないかもしれませんね。女性向きの働き方だと思います。あと、仕事が途切れる印象があるので、それを嫌と感じる人には向いていないと思います。老人ホームの看護師という、人を相手にした仕事なので、明日は大丈夫かなと心配になることもあります。休みが連続すると職場の状況が変わっていることもあるので、情報収集についての努力が必要ですね。
Q. ところで、1日8時間を週4日勤務する週休3日の正社員と、週5日1日5〜6時間勤務する、いわゆる時短正社員と、どちらがいいですか?
私は、給料が同じとしたら週休3日正社員です。寄せ集めて1日分の休みよりも、まるまる1日フリーというのがいいです。早く帰るとパートの人というイメージ。正社員の人と1日同じ時間だけ働くことが大事だと思います。
時短と休みが多いのどちらと聞かれれば、休みが多い方が圧倒的にいい。体も心も休めるから。仕事というと朝から仕事モードだから、切り替える回数は少ない方がいいです。5時間だろうが、8時間だろうが仕事は仕事ですから。
Q. パート(時間給)ではどうでしょうか?
会社によるんでしょうけれど、私は責任のある仕事を任せてもらえないのは厳しい。週休3日の正社員なので、ボリュームを少なくしても責任ある仕事を任せてもらえるのはうれしいですね。パートだと、特に介護の仕事だと、お手伝いしてくれる人という立場になりやすいんです。担当もないし、「すぐ帰っちゃうよね」って言われたり。
Q. 多様な働き方が、生産性やモチベーションを上げる
自分が子育てをしているので子どもの話ばかりですが、介護をしている方も同じだと思います。パートになれば、ガクンと収入が減ってしまう。介護休暇とかありますが、時間はとられるし、お金はどうやって払っていくのって。
Q. 今後、介護の問題が大きくなっていくとき、女性を含め、男性ももっと関与せざるを得なくなります。そんなとき、どうバランスをとりながら仕事ができる体制をつくっていけるかが課題ですね。
女性が仕事を辞める理由って、もう結婚じゃないですよね。断トツで出産や子育て。仕事を続けるお母さんもいるけれど、やっぱり無理だと辞めてしまう人も多い。その人材を眠らせてしまうのはすごくもったいないです。
パートだと勤務時間が短いから保育園に入れられない。幼稚園は昼過ぎに帰ってきちゃうし、3歳まで預けられない。パートだと預け先がなくて働けないし、正職員だと仕事でくたくたになって保育園に行ってまたくたくたになる。すごい極端。もっと流動的な働き方があればと感じます。
パートから正社員に戻るのは、結構ジャンプアップがあって大変。逆に週休3日から週5日勤務に戻るのは楽。私も子どもが3歳になったときに、週5日勤務に切り替えました。育児に少し余裕が出て、もうすこしがんばれるかなと思って。
女性は働きやすさも重視しています。週休3日は共働きでも、サブ的に働いているお母さんだったら絶対に働きやすいと思います。週休3日正社員を採用している職場だと子育て世代が多くなるので、悩みも分かちあえて働きやすい。子どもが熱を出してもお互いさま。条件がいいところはもっとあるけれど、働きやすさは変えがたいですね。疲れきってると、育児や家事もがんばれないけど、仕事もがんばれないですから。
写真・取材・記事:大杉晃弘(写真と、企み) |